記念講演 地域医療を支える中小病院での医師確保の実践 千葉・東金病院 平井愛山先生
【春闘速報30 080605 第26回愛知医療研究集会データPDF121KB】
「医療研究集会、やっぱり 元気が出るね」
学習講演会と職種別「4分科会」で、レポート報告と交流。組合のない病院を含め、33カ所から参加
第26回愛知医療研究集会を
114名・29組合が参加
◆ 愛知医療研・概要
2008年の愛知医療研究集会(第26回)は、“いのちかがやく”~大幅増員で安全、安心の職場・地域、平和を守り 人間らしく~をテーマに1日開催で5月25日(日)行い29組合からのべ114名の参加(午前講演会82名、午後分科会79名)がありました。
全体会の概要は、中島副委員長が司会進行。はじめに主催者を代表し鈴木委員長(中京)が社会保障費の毎年2200億円の削減に反対する全国的な運動の広がりに触れ、「後期高齢者医療保険制度への怒りは政府を揺るがしている」「医療療養病院25万床の廃止も、わたしたちと国民の運動で、政府に断念せざるを得ないところへ追い込んだ。年金も、医療も介護も運動に確信をもとう」と、あいさつ。
午前は、記念講演として「地域医療を守れ~地域住民・NPOとともに~」平井愛山氏(千葉県立東金(とうがね)病院院長)を招き地域から医者が消え、次々に閉鎖される病院、広がる行き場のない患者たちの不安のなかで「医療崩壊ストップ」に焦点をあて、地域住民・NPOがともに千葉県「山武地区」において医師不足による医療崩壊から地域医療を回復させるため、「医師を地域が育てる仕組み」を作りあげ、危機に瀕した地域医療の再生に奮闘されている実践が報告されました。
西尾書記次長から「問題提起」を受け、午後からは、各分科会に分かれて討論を深めました。
◆ 講演会は、医師不足から医療崩壊は、どう再生するかの段階と語られる。
午前の講演会で、平井先生は「医療のステージは大きな曲がり角、医師不足を中心に病院を守る運動は、5年、10年後を考える必要がある」「医療崩壊が地域崩壊と考えており、再生をどうするか、病院勤務者と患者、住民が安心して暮らせる地域を守ろうと考えた時、何が必要か。カギは2つ(1)人材育成 (2)地域連携(限られた社会資源をどう活用するか)」としました。
◆ 地域医療を支える中小病院でも、医師は確保できる、と200床の千葉・東金病院での実践報告
「医師不足解消には、原因は何かを明らかにすること。」として、「06年から開始された新医師臨床研修制度を問題視しがちだが、本当にそうか」と問題提起。「研修制度はきっかけに過ぎず、立ち去り型サボタージュと言われるほど過酷な勤務態勢が積もりに積もったことが原因。OECD諸国の3分の2で欧米諸国平均に追いつくにも、医師数が12万人も不足(全国医師数は27万人)する日本の貧困の改善を指摘しました。
そして、千葉・東金病院が陥った原因を大病院でないから医師不足になったのでなく、「(1)医師確保を大學派遣にだけ任せっきりで、頼り切っていたこと (2)専門医の認定が取れ魅力ある研修体制=医師を育てる視点がなかったから」としました。
◆ 医師を育てるには、魅力ある病院=研修プログラムと病院のネットワークが肝心、県予算も大幅に増額させた
では、医師を育てる病院になるためには、どうするのか。「まずは専門医ライセンスが取得できるよう認定研修病院になることが前提条件だ。」として、「その実践では、(1)熱意のある指導医を確保する (2)魅力ある研修プログラムは、自らの病院で対応できない部分を他の病院との研修ネットワークを確立して実施 (3)(県立病院であるため)県の医師確保予算を増やし、専門医取得までの期間の身分と研修を保障する費用の増額など」を上げました。
とくに東金病院のような地域の200床規模の病院で専門医認定が取得できるし、地域住民にとって政策的に必要な医療を確保する、という点で「総合医・家庭医」を養成する千葉県立病院の研修ネットワークプログラム「わかしお」の事例紹介と成功例は、まさに大病院でなくとも医師は確保できることを証明するものでした。
◆ 開業医との連携システムの実践報告には、目から鱗(うろこ)の優れた実践が語られる
それらの自らの病院での医師の育成とともに、地域の開業医との連携の実践も報告。糖尿病のインスリン治療を通じた取り組みで、専門医が圧倒的に不足し足を切断する事例が絶えないことから調査を開始。千葉県・山武地区(さんぶ)には、糖尿病患者1,200人に対し、東金病院が見ていた400人。東金病院が開業医にも協力をよびかけ、アメリカの糖尿診療マニュアルを普及することで、5年間の取り組みで東金病院が見ていた400人の患者にほぼ匹敵する患者数を開業医でも見られるようになった、との報告でした。自らの病院では無理ならば、地域の開業医とも連携し患者を診る、そういったピンチの時だからこそ、医療連携のチャンスに。との平井先生の講演には参加者は圧巻で、これまでにない視点での地域の病院作りを学んだ有意義な講演会でした。
4分科会の概要報告
「良い仕事がしたい!」「他では、どんな実践をしているか知りたい」
午後は、4つの分科会( (1)看護、(2)精神 (3)検査 (4)保育に分かれ、各分科会毎に、国の政策から生じている問題や課題、それを改善させるための政策要求や職場での運動。そして、。実態交流やレポートが報告されました。
(1)看護分科会(20名、11組合・1病院)
参加組合(南、みなと、尾張、名古屋市民病院(東、城西、守山、緑、全医労名古屋、豊橋医療センター、全医労東尾張、県立病院、民医連事務局分会)
「問題提起」は看護師ふやせ、のこの間の運動で獲得してきた、求人・退職防止対策のプラス面を具体的に、報告しあい聞きあいながら、現状の看護をめぐる課題のもっとも重要な課題・問題となっている16時間交替の現状について、また、サービス残業の実態や改善の取り組みについて交流しあいました。
論議の中では、各組合での前進的な取り組み報告を相互の職場の運動に生かすために夜勤調査や退職数調査など、データを収集しよう、プラス面を自らの職場に持ち帰り、看護役員・看護師の集まりをもつことや、9月に開催する求人・退職防止の前進をめざす「職場代表者会議」を調査結果をもとに交流することが確認されました。
(2)精神医療・保健・福祉分科会(19名、5組合・1未加盟病院)
◇参加組合(国労、なごや協会、北、東尾張、南知多病院)
「問題提起」は、国の精神病院閉鎖抑制政策により、精神障がい者が病院内で生涯を終えていく社会的入院を生み出してきた施策から、できるだけ短期間で入院を終え、地域で生活できるようにと地域で精神障がい者を支えるシステムの整備が重要なこと、リハビリ・社会復帰への取り組みが強化されてたなかで、1人ひとりの精神障害者を病院と地域で支えていくためにはどうしていけばいいのか。急性期を担う精神病院のあり方、療養が安心に保障される精神病院のあり方が提起されました。
第1部として日本医労連精神部会長・氏家憲章氏から「すすむ精神科病院の二極化」と題する講演会で精神病院がどのように変わってきたのかを振り返り、これからの精神病院のあり方を考えました。第2部では、北・西区障害者地域生活支援センターなないろ新井康弘氏から『こころとくらしのサポートセンターなないろ』の活動概要の報告を頂き、精神障がい者が地域の中で生活を送るためにサポート活動について講演をいただき、患者・利用者への関わりについて考えました。
(3)検査分科会(6名、6組合)
◇参加組合(全医労名古屋、南、中京、名市大、旭、国共東海)
「問題提起」は、医療の根幹をなす各種検査は診断や治療に必須のものであること。必要な検査が必要な時に速やかに実施できないことは、診療の障害にもつながり、質の確保が患者の不利益につながるという位置づけを改めて確認し、採血問題、ブランチ・FMSなどの外注問題、24時間体制などを課題としました。
今回は、とりわけ病院の規模などにより待機・オンコール体制や宿日直体制で対応している検査室が多いなか、2002年の厚生労働省労働基準局長名で「医療機関における休日および夜間勤務の適正化」が通達され、当直から交替制勤務に移行する施設も出ているため、24時間検査体制の現状、交替制勤務へ移行した施設の状況や問題点を討論しました。医療研全国集会(札幌)も念頭において「愛知県での夜勤体制アンケート」にも取り組み、責任のもてる検査を提供しチーム診療に貢献、患者のための医療を守るために検査技師一人一人がどうしたらいいのか、を交流しました。
(4)院内保育分科会(30名、8組合・3病院)
◇参加組合(全医労名古屋、自治労連豊橋、自治労連半田、愛厚労更生、民医連南、名南会
福祉保育労、3未加盟病院) 「問題提起」は、病院にとって医師・看護師の確保が生命線となっており、院内保育所が大きな役割を果たしていること、新たに院内保育所を新設して労働力の確保を目指す院所が増えてきている現状から、院内保育所のあり方と保育所の健全は発展を参加者の皆さんとともに考えあうことを提起。
竹沢清(愛知・元ろう学校教員)を講師に招いての講演会を開催、県内の全ての院内保育所への「アンケート調査」運動で集約された保育実態調査を事前に取り組み、相互の実態交流を行いました。
<愛知医療研の参加組合及び「施設・事業種別」施設数>
分科会名 参加数 組合数 その他の事業所数 合計
(1)看護分科会 20名 11組合 1未加盟病院 12病院
(2)精神分科会 19名 5組合 1未加盟病院 6病院
(3)検査分科会 6名 6組合 6病院
(4)院内保育分科会 30名 8組合 3未加盟病院 11病院
参加組合及び医療研にご協力頂いた組合 有り難うございました
全医労・名古屋、東尾張、豊橋、国共病組・東海、全労災・旭、中京 自治労連・豊橋市民
豊川市民、蒲郡市民、半田市民、春日井市民、名古屋市守山市民 東市民、緑市民、城北市民、 城西市民、名市大、なごや福祉施設協会、済生会 堀尾安城、国労 愛厚労・更生、民医連・南、 みなと、名南会、北、尾張健友会 民医連事務局、南知多(以上ダブり除く)