【08.10.26】【秋闘速報(12)2008年10月15日】

看護師の2009年募集状況と各病院での離職防止対策等の対策

【速報・看護師版】
08年「秋の職場の要求闘争」に生かしましょう

看護師の2009年募集状況と
各病院での離職防止対策等の対策
2008年10月1日~3日、「秋の病院訪問・懇談」の結果から

看護師確保と定着には、公務員水準の賃金と労働条件

(1)賃金水準が公務員レベル、ボーナス年間4.5ヶ月以上確保に努力
(2)完全週休2日制を確保
(3)新人定着対策 →新人教育の改善、独身寮改善など福利厚生の充実
(4)子育て支援対策→院内保育設置・延長保育や24時間保育への改善
(5)ゆとりをもって働ける環境づくり→年休消化アップ、残業削減、等

7対1看護取得の中部労災病院、今年は名城病院で
退職防止対策で特徴
決め手は・・・・・・!?  
◆ 残業の大幅削減、そして
◆ 年休消化アップ、5日間連続休暇保障

【1】 全体概要 
 今回の病院訪問は、医師、看護師、介護職の3点について実施し、貴重な意見や努力と工夫が、各病院管理者のみなさんによって紹介され、今回は前回にも増して大きな成果がありました。また、国への意見や労働組合への期待と要望も出されおおいに励ましとなりました。
 昨年から7対1看護を取得し退職者を半減させ話題となった(中部労災621B)に、加えて今年は、名城病院でも7対1看護取得での変化が語られました。2病院に共通するのは、『「7:1取得の効果で今年は、退職希望者が少ない』『残業を大幅に減らすことができた』等です・・・・。
 今号は、速報版で看護師のみ掲載しましが、10月執行委員会を経て、全体の「まとめ」を、  近日中に送付いたします。秋の交渉や来年の新人募集、離職防止対策に活用してください。
 訪問数・32カ所。通し参加者 のべ29名。役員や参加者のみなさん、たいへんご苦労様でした。
【2】 特徴的な、「2つの病院」を紹介します

○○中部労災病院では○○

決め手は、「残業削減」と「有休取得・・・・」
※7対1看護取得で、残業が平均月/4時間
※組合との協定で
夏休み連続・5日+年休で「海外旅行に年間・看護師の3割」

中部労災病院(621床、名古屋市港区)
看護師の定着、確保は、7対1取得は、やはり定着にプラス
年間退職数  67名→39名に減少 とにかく退職者が少ない
主な離職防止 保育所開設
       看護師宿舎
       7対1取得で日勤者が増員に、夜勤者も準夜3:深夜3、準夜3;深夜と体制増
       「年休・増加」+「残業・削減」が離職防止の決め手

○○新たに7対1を取得した名城病院では○○
                 (今年7月取得、ただし4月から1病棟閉鎖)
国家公務員共済・名城病院(364床、名古屋市中区)
以下は、中部労災と共通する点
・ 上半期の退職者が例年の3分の1に減少
・ 超過勤務が平均10時間以内になった(多い看護師でも20時間程度)
・ 年休取得率は、50%程度(上半期)

これ以外の離職防止の努力
・ 新人の夜勤入りは、例年6月を1ヶ月ずらし7月に
  個々の状況によって夜勤回数も無理をさせない回数で調整(退職者を減らすため)
・ 院内保育所がない(敷地が狭く無理だったため)
   今年4月から子どもの保育料を半額補助制度新設
    第2子は、3分の1の補助
    非常勤も保育所利用の対象者にしている
    スタッフの1割程度が利用している
    保育所利用者の院内駐車場の優先利用も行う
・認定看護師への補助は、受講中は休職扱いで、給与を半額補助している

「ゆとり・休み(週休2日制度+5日間以上の連続休暇)の重視」は
退職者率が低い病院に共通か

・名古屋市5病院では、概ねどの病院も「離職率5%」の管理者からのコメント
・看護師のモチベーションを上げるのは休みの部分が大きい。
 希望する休みはできるだけ取らせる
 夏休みは5日間。1週間長期休暇取れるようにしている。

【3】  昨年にまして看護師求人状況は悪化、退職防止が職場と看護守るカギ!!
改めて、大きな退職率の「違い」の理由を、労働組合で分析し、考えてみよう
(1) 昨年は何とか定数を確保していたが、今年は既に欠員状態で来年の定数確保に
    メドがたたない病院が増加。
    退職率→名古屋市民5病院(5%台)から、済生会(30%台)まで大きな違い

 求人面では、昨年はなんとか、確保していた、が多かった。しかし、今年は求人がなく困っており、欠員が埋まらず、そのままになっているとの回答が相当数にのぼっている。同時に、来年の求人も昨年と比べ、募集数を確保したと回答する病院が極めて少数になっている。
 定着・退職防止では退職率は、各病院により大きな開きが発生。一般に退職者数15%程度といわれるが、名古屋市民5病院(退職率5%、200床~500床)と退職者数が少ない病院から済生会(退職率30%、稼働200床)まで大きな格差が生じている。求人難がいっそう強まっている状況のなかで、退職が止まらない場合には、大規模病院ほど欠員数が多くなることが容易に考えられる。

(2) 一方で、困難な状況にはあるが離職が少ないので、対応できていると回答する
   中小規模病院
   理由は・・・(1)ゆっくり働ける。(2)年休が取得できる。(3)残業がほとんどない

 公立の中小病院では、昨年に続き以下の報告。「離職が少ないので充足(公立・尾陽病院)、」「看護師の今年度退職予定者は、なし(一宮市立・木曽川病院)」 

(3) 大病院だって退職率は低い病院がある!豊橋市民(8%)、豊川市民(5.7%)
 一方、賃金、労働条件の面から比較すると、必ずしも大規模病院ほど退職率が多いとは言えません。豊川市民病院(400床、年間退職20名。看護師数345名で退職率5.7%)であり、第3次救急を担う豊橋市民病院の状況も以下のとおり(910床、退職率8%)。
 中部労災病院や名城病院で紹介している退職者防止に特徴的な2病院とも共通する、賃金労働条件面の水準が公務員水準に達し、さらに、残業・減、年休・増が大規模、中小規模を問わない退職防止効果を発揮していることは、先にあげた中小病院で退職者数の少なさとも共通する点となっている。

【4】 人材の確保・定着対策 (項目別の特徴点)

(1) 子育て支援対策(保育所開設・延長保育、24時間保育、利用料補助)
・今年4月から子どもの保育料を半額補助制度新設した第2子は、3分の1(名城病院)
 非常勤も保育所利用の対象者にしている。スタッフの1割程度が利用(名城病院)
 保育所利用者の院内駐車場の優先利用も行う(名城病院)
・延長保育は19時まで、保育料を3万5600円→3万4800円に減額した(西尾市民病院)
・院内保育所の改善で24時間保育実施する。まず東市民から開始予定(名古屋市東市民)
 夜勤のある職員は、全員対象に保育
・産休育休者25~28名。保育所は利用増加、現在22名。定員30名。(春日井市民病院)
・保育所は利用増加、現在25名(従来20名弱)。定員30名。(豊橋市民病院)
(2) 年次有給休暇、夏休み等

・年休取得(公的・公立病院は、年間公休日数は125日にプラス+年休数になります)
 年休取得率は、50%程度か(名城病院)
 月1回は取れている(尾張健友会) 
 年休年間10日くらい。(名古屋市・城西病院)。
 年間取得は9.2日(一宮市立・木曽川病院)。
 年間平均4日、5日くらい(名古屋市・東市民病院)
 平均5日から6日(西尾市民病院)
 平成19年度悪くて平均4.5日。今年度は半年で平均6日取得。(春日井市民病院)

・夏休み(連続5日以上を、積極的な努力)
 中部労災、夏休み5日労使協定、連続取得で、海外旅行など年3割。(中部労災)
 夏休みは5日。連続休暇できるようにしている。(一宮市立・木曽川病院)
 夏休みは5日間。1週間長期休暇取得に配慮。看護師のモチベーションを上げるのは休み の部分が大きい。希望する休みはできるだけ取らせる。(名古屋市・城西病院)。

(3)教育・研修制度等の改善

・新人教育
 看護師「臨床研修制度」内容は以下(半田市民病院)
  4月から6月にかけての3ヶ月間、7月から1人たち、看護師1名に担当者が1名配置
  前期 ローテート 急性期  ・2週間
          +亜急性期 ・2週間
          +オペ室/救急・2週間
  後期 配属部署で研修

・夜勤入りは6ヶ月以降に延長、個々の状況に応じて丁寧な対応
 新人の夜勤入りは、例年6月を1ヶ月ずらして7月にし同時に個々の状況により夜勤回数 も無理をさせない回数で調整 退職者を減らす(名城病院)
 新人教育は、夜勤には6ヶ月間は入れない(西尾市民病院)
 時間内で看護協会の研修参加(半田市民病院)

【5】 その他・行政への意見

(1) 診療報酬や、医師不足問題、医療崩壊への要望等
・社会保障費2200億円の削減を撤回を(2件、名南会、中部労災)
・外来患者数の減少は、医療保険制度の影響(共通)。
・ガイドライン問題  医師確保が内限り経営改善もない(共通)
  政策と自治体の理解を国の制度設計の見直しや中長期的な見直しが必要
  不採算部門は、つぶせの声もあるが頑張りたい(2件、尾陽、新城)。
・地域医療を守るのは地域住民が起こす運動が必要(1件、尾陽)。
・個々の病院を守る運動でなく地域医療守る視点での運動が必要(2件、名南会、東栄町)・ 地域医療守ることと病気にならない健康作りの対策も、地域で後援会活動(東栄町)
・潜在看護師の復帰プログラム-各病院任せでなく、国や県が支援策を(1カ所、済生会)
・医師も看護師も大変。介護職員処遇悪い。処遇改善めざしがんばりたい(2件みなと、名南会)
・もっと周辺住民や地域に対し、個々の労使間での社会保障での運動が必(1件、名南会)
(2) 看護師関係の要望等
・7対1看護は、病棟取得であって欲しい(豊橋医療センター)。
 全国13万床で取得必要人員は8万人、新人は5万人 足りるはずがない
・潜在看護師の復帰プログラムは、各病院任せでなく、国や県が支援策を(済生会病院)

(3) 事故米に対する、病院の管理対応
・愛知県から通達が出ており、必要な場合には保健所に相談を(共通)
・どの病院でも、業者に対し既に、調査を実施し、安全を確認した状況(共通)
・調査方法は、仕入れルートの確認と公表されている事故米販売業者との突き合わせ(共通)
・患者、来院者に公表していた(3件、名古屋市民5病院、豊橋市民、半田市民)
・問題となっているメラミン等、原形をとどめない食材への混入には、手が打てない(共通)
・委託業者であっても地元産70%使用の契約を指示していた(1件、豊橋市民)

【資料】 求人・離職防止対策の「エッセンス」

(1) 2009年、2008年の2年間の新人募集対策、退職防止の特徴
  1. 大病院と中小病院 2)都市部と郡部の明確な2極分化。
  2. 賃金・ボーナス、週休制度が人事院勧告以上の水準確保の大病院は、社会的争奪戦の中でも確保
  3. 募集の工夫では退職させず準職・パートで雇用継続、条件がそろった時点で常勤復帰
  4. 募集困難な中小、郡部の病院は、離職防止に相当な配慮を行っている

(2) 求人・退職防止のための賃金・労働条件改善対策
  1. 残業が少ない、年休取得が良い病院は、年間退職者数が際だって少ない
   1) 残業は、かなり減らしたが目立った
   2) 自治体、公的病院は週休2日制だが、この間は年休取得アップにも力を入れている。
年休・年10日から14日以上。夏休み5日」との回答が相当数に増加
   3) 日勤-深夜入り者は、時間年休を取り18時前には帰す努力
  2. 夜勤体制は3人を超え4人も検討。夜勤回数は10回は出さない等、夜勤軽減に配慮
    自治体病院、公的医療機関等の病院では3:8、2:3:8がほぼ全体傾向
  3. 子育て支援
   1) どの病院も院内保育の「拡充」を表明
     院内保育開設検討、24時間保育を1週間2回程度検討
   2) 前回訪問に比べ、妊産婦や育児休業復帰者に対し配慮する病院が増加
   3) 妊産婦や育児休業復帰者に対する配慮、夜勤ができない看護師の部署異動等も対処
     申し出があれば2年夜勤免除。
     育休復帰支援は、比較的勤務が大変ではない部署配置
     育休復帰後の部署は本人希望通りに。早番も入れない。
     院内保育所ない場合は、育休復帰者は希望を聞き対応。短時間勤務希望も聞く
  4. 教育研修
   1) 新人研修を期間を6月→8月まで延長、ゆっくり育てるが多数。
   2) 看護協会の研修会に時間の保障、認定看護師費用やケアマネ取得費用を病院負担等
     病院の看護イメージアップ、看護師のやりがいを生かせる工夫と努力も出てきた。
  5. ワンルームマンション効果は看護師も医師確保にも共通認識、奨学金等も規模に関わらず積極対応
    5年利用可。半額補助2万5千円、看護師宿舎設置と新たな意向表明(東栄町立70B)」
    奨学金「3万円だが、総額増10人分確保)」、昨年から奨学金制度導入、月5万円
    准看奨学金規定を2年課程通信制に適応。

(3) 退職数は同規模病院であっても、それぞれの病院ごとに相当な格差が生じている
   面談やアンケートについては、「(単なる)退職者数の把握」から→「辞めたい理由と希望を聞き対応・   検討」へ切り替えた病院が退職数を明確に減らしている。病院により管理者の姿勢に違い(感想)

公開:2008年10月26日   カテゴリー: