憲法は国家権力の失敗を繰り返さない“貼り紙”
人権意識・想像力を働かせて
2017年5月28日(日)第35回愛知医療研究集会が会愛されました。石田副委員長の司会で始まり、西野実行委員長(委員長)が開催挨拶を行い、基調報告を西尾副委員長が行いました。午前の記念講演は91名が参加し、午後は5つの分科会が行われ75名が参加し、15組織54名(ユニオン6名・書記局5名含む)、未組織61名(4事業所)で総勢115名が参加して元気の出る集会となりました。
記念講演は、「憲法という希望~誇りを持って働き続けるために~」と題し、木村草太 氏(首都大学東京教授 憲法学者)のお話でした。「憲法は『貼り紙』」のようなもので、『国家権力の三大失敗』?無謀な戦争、?人権侵害、?権力の独裁、の失敗を繰り返さないための仕組み。」と分かりやすく説明。「『人権侵害』は認識することが難しく、国家権力は何度も繰り返してきた。魔女裁判は、多くの人が冤罪だったであろう。こうした人権侵害を国家は何度も繰り返し、過去の過ちを繰り返さないようにしようという、ルールを書き込んでこれを守らせようとすること、これが『立憲主義』の考え方。立憲主義によって、個人の自由を保障し、権力の濫用を防ぐというもの。」と話しました。
「憲法を身近な問題として話して欲しいという講演依頼を受けるが、憲法は最低限のものであり、困っている人を助けるための法。自分にとって身近でもそうでなくても困っている人を助けることを考えるべきではないか。『生存権の現場』のケースは(具体例をあげ)、公的支援を受けなければ死亡に至る深刻なケースがあり、如何に非情なのか、困っている側の主張に耳を傾け、『想像する力』を持って自分にひきつけて考えていくことが大切ではないか。」など、憲法24条は同性婚を禁止するものではない、PTA問題や学校教育の道徳問題にも触れられました。加憲についての質問に対して、「教育の無償化は立法でできる、国民投票には850億円も費やし他に充てるものがあるのでは」と述べられました。木村さんの話は、歴史上の人物が登場したり、例えが分かりやすく何度も会場から笑いが溢れ頭の中は想像力が湧き溢れ分かりやすい話に引き込まれました。憲法を学び、「人権意識や人間はみんな平等だという意識、国民主権」と憲法に込められた力(著者タイトル)や、大きな希望に満ちた憲法の素晴らしさに確信を深めた講演でした。
講演後は著書へのサイン会も開催されました。
再び戦争の惨禍を起こすことのないよう
開会あいさつで西野実行委員長は、憲法前文を紹介し「政府の行為によって再び戦争の惨禍を起こすことのないよう、憲法を学び行動しよう」と話しました。
基調報告は、西尾副委員長が、「安倍政権は軍事予算を膨大に膨らませ、社会保障予算を冷遇し、介護保険3割負担(一定収入者の)など医療社会保障の改悪が進み医療が受けられずに死亡するケースや、医療・介護の過酷な労働問題が深刻化している。憲法加憲、共謀罪法案など憲法施行70周年のいま、憲法が脅かされる状況にある。安倍政権暴走にストップかける世論を広げ、憲法を未来につなげよう。また、継続的・集団で、患者・利用者・労働者の置かれた状況を話し合い、制度の改善や労働組合の要求運動を職場・地域に広げ、医療介護福祉の改善に取り組んでいこう」と報告しました。
分科会では、講師はじめレポート報告で豊かな実践活動が集団討議でき、問題意識を共有し改善の方策がみえてきました。参加者のみなさん、講師・レポート報告をしていただいたみなさん、運営協力をしていただいた執行部のみなさんありがとうございます。お疲れ様でした。
分科会 豊かなレポート報告や講師の話から大きな学び
実践や問題点を語り、元気の出る分科会
今回はテーマ別に、?安全な食事介助の実践・給食に向けて、?子どもの発達にどう向き合うか、?医療・介護制度改革でどうなる??働き方の改善を共に考えよう、?障がいを抱え地域で暮らすために、と5つの分科会を開催しました。
講師はじめレポート報告で豊かな実践活動が集団討議でき、問題意識を共有し改善の方策がみえてきました。
【分科会内容】
●第1分科会:南生協労組の貝本さん、増田さん両STを講師に、「安全な食事介助の実践に向けて」を学びました。最新の摂食についての知識を学び、完全側臥位の実技も体験しました。参加者からも実践や悩みを報告し合い、調理師、看護師、ST、栄養士、介護職の多職種で交流を持ち、「食」の大切さを実感しました。
●第2分科会:元日本福祉大学講師の水谷暎子さんを講師に「あなたの笑顔と子どもの笑顔が響きあう保育」を学びました。月齢の発達のポイントや「丈夫でかしこく心ゆたかな子ども」をテーマに目標にその関わりを丁寧にお話して下さいました。南生協労組からレポート報告が発表され、それぞれ院内保育所で困っていることなど交流を深め院内保育所の役割が高まっている中で人員不足など改善が追い付いていないことも課題にのぼりました。
●第3分科会:社保協事務局次長の西村秀一さんを講師に、「医療介護総合確保法と地域共生社会」を学びました。全医労愛知地区の長尾さん、豊橋市民の川村さん、北生協の池田さん、そるとケアプランセンター塩田さんの4本のレポート報告が行われ、医療社会保障制度の内容と国民の医療介護社会保障を守る視点を深めました。
●第4分科会:「労働時間の適正な把握のために使用者が講ずべき措置」を学びました。豊橋市民の中川書記長の特別報告は、夜勤回数、超過勤務時間数、休憩未取得など数値をつかみ、団交など要求実現の有効な手法につながっていることが報告されました。参加者から会議の不払い、待機問題、仮眠未取得の実態が報告され、「ガイドライン」を職場でいかし、残業・休憩・休暇など諸権利の100%請求に向けて頑張る決意を深めました。
●第5分科会:「障がいを抱え地域で暮らすために」をテーマに、北医療生協こころとくらしのサポートセンター『なないろ』の当事者・スタッフ・地域の方が講師で、当事者・家族の主体的な活動拠点の支援の取り組み、実践的な取り組みを聞きました。当事者からバレーボール、音楽、絵画などを通して仲間と共にイキイキと生活している様子や一生懸命な様子が報告されました。病気や障がいで苦しいときもいろいろな人の支援の中で前向きに目標を持って取り組む姿や当事者の誠実さ真摯な姿に元気をもらう内容でした。
未組織の方らかも大勢の参加
愛知県内の未組織の病院にも案内を送り、病院・介護関係者他、一般の方から61名が参加しました。講師の木村草太さんの関心の高さが伺えます。また、案内に医労連共済のことをお知らせしたところ、『火災共済』に加入したい!との問い合わせがありました。未組織の輪が広がるとよいですね。
感想
◆歴史を紐解き国家が犯した三大失敗に触れ、憲法を守るのは国民一人ひとり。立憲主義の精神をしっかり守っていきたいと強く感じました
◆人権問題は目の前でおこっていてもわかりにくいという話に、まったくそうだなぁと感じ、人権にこだわることの難しさも考えさせられました
◆さいごの「身近」のとこはとてもひびきましたね!
◆認識できていない、見えにくい人権侵害、自分も見逃していないかドキッとした。現場をそういう視点でもう一度見ること、想像力とともに
◆憲法を深く読み取る力の大切さがわかりました
◆人権の問題、とても難しいですね。侵害されてもいやだなと思って終わりになってしまう。想像力が働かない。「人権問題はそれを認識することが難しい」ということばが印象に残りました
◆木村さんのお話を直接聞きたかったので勉強になりました
◆難しい憲法の事を多くの事例を示し話されたとこはとてもわかりやすく、これからの運動につなげていける
◆最後の言葉は「わが意を得たり!」という感じだった。憲法問題へのアプローチ「想像力」を大事にするということが参考になった
◆国家の犯してきた三大悪に触れ、憲法変える必要全くない!!!のだと確信を深めました。
◆日本国憲法は立憲主義。私たちの不断の努力が試されているとき。